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特例金利に反対する会長声明
賃金業制度及び出資法の上限金利の見直しを検討していた金融庁は,本年9月5日,自民党に出資法などの改正案を提示し,本年9月15日,自民党金融調査会など合同会議では金融庁案を修正する合意がなされた。
自民党に提示された金融庁の改正案は,出資法の上限金利を利息制限法の上限金利に一本化するものとしながらも,上限金利の引き下げ時期は法改正から4年後とし,しかも,「元本50万円,返済期間1年」または「元本30万円,返済期間半年」の個人向け小額短期貸付,「元本500万円,返済期間3ヶ月程度」の事業者向け貸付については,出資法の上限金利引下げ後も最長5年間,年利28パーセントもの高金利を特例金利として容認すること,利息制限法の金利区分を変更すること,年利15パーセントから20パーセントの間の違反は刑事罰ではなく行政処分で対応することなどを内容としていた。
これを受けて,自民党金融調査会など合同会議では,上限金利の引き下げ時期を法改正から3年後に短縮し,特例金利を「返済期間1年以内,融資額30万円まで」個人向け,「返済期間3カ月,融資額500万円まで」の事業者向けについて,年利25・5パーセントまでとし,特例期間を2年間に短縮するなど金融庁案を修正する合意がなされ,政府・与党は今臨時国会に改正案を提出する予定であることが報道されている。
しかしながら,今回の法改正は,賃金業規制法43条のみなし弁済規定の適用を否定し,利息制限法によって債務者を救済すべきことを示した相次ぐ最高裁判所の判決を受けて,200万人以上にのぼると推定される深刻な多重債務者問題を解決することを目的としたはずのものである。
ところが,今回の金融庁改正案及び自民党金融調査会などの合同会議修正案は,多重債務問題の根本原因となっていたグレーゾーン金利を撤廃するのではなく,一定範囲で存続させることを認めるものであるうえ,利息制限法の金利区分を変更して債務者によっては金利負担がこれまでよりも増えてしまうことを認めるなど,明らかに多重債務者問題の解決という法改正の目的に逆行するものとなっている。
よって,金融庁改正案及び自民党金融調査会などの合同会議案には断固として反対するとともに政府・与党・国会に対し,法改正においては,以下のことを貫徹するよう求める。
1 賃金業規制法43条のみなし弁済規定を改正法施行と同時に廃止すること。
2 出資法の上限金利を改正法施行と同時に現行利息制限法の金利区分による上限金利まで引き下げ,グレーゾーン金利を存続させないこと。
3 小額短期・事業者特例などグレーゾーン金利を容認する例外は一切認めないこと。
4 保証料などの名目による金利規制の脱法を一切禁止すること。
2006(平成18)年9月29日
金沢弁護士会
会長 木梨 松嗣