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全面的な国選付添人制度の実現を求める会長声明
弁護士付添人は、少年審判において、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年の立場から手続に関与し、家庭や学校・職場等少年を取りまく環境の調整を行い、少年の立ち直りを支援する活動を行っている。
居場所を見つけられず、また、信頼できる大人に出会えないまま、非行に至ることも少なくない少年を受容・理解したうえで、少年に対して法的・社会的援助をし、少年の成長・発達を支援する弁護士付添人の存在は、少年の更生にとって極めて重要である。
しかし、2008年統計によれば、家庭裁判所の審判に付された少年(年間54,054人)のうち観護措置決定により身体拘束された少年は11,519人に上るのに対し、弁護士付添人が選任されたのは4,604人と全体の約40%(審判に付された少年全体に対しては約8.5%)に過ぎない。刑事裁判を受ける被告人の約98%に弁護人が付されていることに比して、心身ともに未成熟でより法的・社会的援助が必要な少年に対する支援は極めて不十分な状況にある。
こうした状況が生じている原因には、現行の国選付添人制度が、対象事件を重大事件に限定し、しかも、国選付添人を選任するか否かを裁判所の裁量に委ねていることがある。
また、昨年5月21日以降は、被疑者国選弁護制度の対象事件がいわゆる必要的弁護事件にまで拡大されたことにより、被疑者段階の少年に国選弁護人が選任されていながら、家庭裁判所に送致された後は国選付添人が選任されないという深刻な事態も生じており、制度上の矛盾が一層明らかになっている。
このような状況の下、日本弁護士連合会は全会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を設置し、これを財源とする少年保護事件付添援助制度を設け、当会では、少年鑑別所に収容された少年に対し、弁護士が無料で面会する当番付添人制度を全件で実施している。
しかし、こうした私費による付添人制度の拡充は、被疑者国選弁護制度の拡大に伴う付添援助制度の利用者の増加により、財政的な危機に瀕しており、上記のような現行の不十分な国選付添人制度も相俟って、このままでは、弁護士付添人による少年に対する支援の一層の拡大に困難を伴うといわざるを得ない。
わが国が批准している子どもの権利条約第37条(d)は、「自由を奪われたすべての児童は、弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有する」と規定しており、少年に対し適正手続を保障し更生の支援をすることは、そもそも国の責務である。
とりわけ、少年鑑別所に収容された少年は、事件の軽重を問わず家庭環境や生育歴に複雑な問題を抱えていることが多く、また、少年院送致等の重大な処分を受ける可能性も高いことから、国費による弁護士付添人の援助の体制を整える必要がある。
よって、当会は、国に対し、国選付添人制度の対象事件を、少なくとも少年鑑別所に収容され身体拘束を受けた少年の事件全件にまで拡大するよう、速やかに少年法を改正することを求める。
2010年6月24日
金沢弁護士会
会長 山崎正美