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接見室内での写真撮影に関する東京高裁判決に対する会長声明
接見室内での写真撮影に関する東京高裁判決に対する会長声明
東京高等裁判所は,本年7月9日,東京拘置所の接見室内で,接見中に被告人の健康状態の異常に気づいた弁護人が,弁護活動の一環として証拠保全目的で被告人を写真撮影したところ,拘置所職員から写真撮影を制止され,接見を中止させられたことについて,弁護人の接見交通権や弁護活動の自由を侵害するとして提起された国家賠償請求事件で,国に損害賠償を認めた原判決を取り消し,請求をすべて棄却するとの判決を言い渡した。
憲法34条前段は,被疑者・被告人(以下,「被告人等」という。)に対し,弁護人から充分な援助を受ける機会をもつことを保障し,このような権利保障のもと,弁護人は,被告人等の刑事手続上の諸権利を実現すべく,誠実に弁護活動を行い,最善の努力をする義務を負うものであって,それにより,正しい刑事裁判が実現されるのである。
証拠保全のために接見室内で写真撮影(録画を含む。以下,同じ。)をすることは,被告人等が弁護人による充分な援助を受ける機会をもつために最大限に保障されるべき弁護活動に含まれるものであるから,刑事施設等の職員は,逃亡や罪証隠滅の防止といった拘禁目的に具体的な支障が生じない限り,接見や写真撮影等の弁護活動を妨害してはならないものである。
しかるに,本判決は,単に刑事施設が定めた規律侵害行為があれば,写真撮影を制止し,接見を中断させることができるとし,これらの措置は弁護活動を不当に制約しないと判示したものである。これは,刑事施設等による弁護活動の侵害を安易に許すものであり,到底是認しうる判断ではない。
刑事施設,留置施設,鑑別所が,撮影機能を持つ機器及び録音機能を持つ機器の持ち込み並びに面会室内における写真撮影を禁止したり,弁護人が接見室内でした録音又は写真撮影画像(録画を含む。)の内容を検査したりすることは,弁護人の秘密交通権及び正当な弁護活動を侵害するものであるが,本判決により,弁護人の誠実な弁護活動が萎縮することが危惧される。
当会は,本判決に対し強く抗議するとともに,刑事施設,留置施設,鑑別所に対し,接見室内における写真撮影等を禁止するなどして弁護人の弁護活動を侵害することのないよう強く求める。
2015(平成27)年8月27日
金沢弁護士会
会 長 西 村 依 子