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「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の成立に抗議し,廃止を求める会長声明
「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の成立に抗議し,廃止を求める会長声明
1 声明の趣旨
「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の成立に抗議し,廃案を求める。
2 声明の理由
2016年12月15日,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下「カジノ解禁推進法」という。)が成立した。
当会は,2015年9月24日にカジノ解禁推進法案に反対し,廃案を求める会長声明を発出した。2015年4月に超党派の議員連盟によって提出されたカジノ解禁推進法案は,一定の条件のもとで刑法第185条及び第186条で処罰の対象とされている「賭博」に該当する行為を合法化してカジノを解禁するものであり我が国の刑事司法政策に重大な変更をもたらすものである一方,暴力団対策上の問題,マネー・ローンダリング対策上の問題,ギャンブル依存症の拡大・多重債務問題再燃の危険性,青少年の健全育成への悪影響など,看過できない様々な問題点が存したからである。
ところが,2016年11月30日に突如審議入りした法案は,衆議院内閣委員会では約6時間という極めて短い審議時間で採決が強行された。さらに,参議院内閣委員会では,刑法が賭博を犯罪とするなかで民間賭博を認めることの法秩序全体の整合性の点からの問題点も改めて浮き彫りとなったが,同委員会でも十分な審議は行われず,修正案についても修正動議の後わずか数十分の審議で可決された。
カジノ解禁推進法は,我が国で現行刑法制定以前から歴史的に厳に禁止され刑罰の対象とされてきた賭博行為を,一部とはいえ非犯罪化するものであり,また,民間賭博を初めて正面から公認するというものである。この点からも慎重な審議を要するものであるが,今回のカジノ解禁推進法の審議過程は,あまりに短時間で,拙速にすぎるものであった。
また,参議院での採決前に,ギャンブル依存症等の弊害に対応した対策をとることを明らかにする修正が加えられたものの,その内容は抽象的な表現にとどまっており,いかなる対策が講じられるかについての具体的な提案はされていない。
以上のとおり,カジノ解禁推進法は,当会が指摘していた問題点についての解消策が全く講じられておらず,その審議経過も拙速である。内容にも成立過程にも重大な問題があると言わざるを得ない。
よって,当会は,カジノ解禁推進法の成立に強く抗議し,その廃止を求める。
2017年(平成29年)1月26日
金沢弁護士会 会長 川本藏石