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新型コロナウイルスに関連した差別的言動に抗議するとともに,各種の法的課題の解決を目指す会長声明
新型コロナウイルスに関連した差別的言動に抗議するとともに,各種の法的課題の解決を目指す会長声明
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,世界各地において,感染が拡大しております。我が国も,その例外ではなく,政府は,2020年(令和2年)4月7日,新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき,東京都等の7都府県を対象地域として緊急事態宣言を発出し,同月16日には緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大しました。この中で,石川県は,「特定警戒都道府県」に指定され,特に重点的に感染拡大防止の取り組みを進めていくべき地域とされました。5月4日には,「特定警戒都道府県」の指定は維持されたまま,緊急事態宣言が延長されました。同月14日,当県の緊急事態宣言は解除されましたが,感染拡大防止の取り組みは今後も継続しなければならないとされています。
これまでのように,県内における感染が拡大するにつれ,残念なことに,感染者及び医療従事者等やその家族等関係者に対する差別的言動や嫌がらせ行為・プライバシーの侵害等の深刻な権利侵害が,日々,報道されています。
私たちは誰もが新型コロナウイルスに感染するリスクを抱えて日々の生活を送っています。次に感染するのは,私かもしれませんし,あなたやあなたの大切なご家族かもしれません。新型コロナウイルスに望んで感染する人は誰一人としていません。感染が判明した方々は,新型コロナウイルス禍の被害者であって,様々な不安を抱き,命の危険にさらされながら,家族や友人とも容易に会えない状況で,新型コロナウイルスと闘っています。感染者の家族等関係者も,自らの発症の不安を抱えながら,必死で感染者を支えています。私たちは,そのことを忘れてはいけません。
石川県は,「特定警戒都道府県」に指定され,現在でも,新型コロナウイルスの感染爆発や医療崩壊が危惧されています。このような事態を何としても食い止めようと,医療従事者の方々は,自らも感染するリスクが非常に高い環境下で,寝る間もなく必死に働いており,まさに最前線で新型コロナウイルス感染症と闘っています。介護施設でも,懸命な感染防止が続けられています。私たち一人ひとりが,このような医療従事者等の方々に感謝し,最大限に支援していかなければなりません。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐことができるのは,私たち一人ひとりです。政府や地方自治体が専門家の意見を聞きながら様々な対策を講じたとしても,私たち一人ひとりが,危機意識を共有し,一致団結して,この未曾有の危機を乗り越えていくという強い決意を持たなければ,この危機を乗り越えることはできません。新型コロナウイルスと今まさに闘っている感染者の方々や医療従事者等の方々,そして,その家族等関係者に対し,私たちがなすべきことは,声援を送り,最大限に支援することであって,差別的言動や嫌がらせ行為等をすることではありません。そのような言動や行為等をすることは,人権侵害に他ならないばかりか,ひいては感染拡大や医療崩壊を招き,社会全体を危険にさらす行為であり,決して許されません。
当会は,感染が判明した方々や医療従事者等の方々,その家族等関係者に対する差別的言動や嫌がらせ行為等に強く抗議するとともに,この未曾有の危機というべき事態に法律専門家として,広く新型コロナウイルス感染拡大に起因する各種の法律的課題に対応していきます。
その活動の一つとして,現在当会では,日本弁護士連合会が開設した「新型コロナウイルス関連法律相談全国統一ナビダイヤル(全国共通電話番号:0570-073-567「おやなみコロナ」)」に参加するなどの法律相談活動を行っておりますが,今後新型コロナウイルスに起因して法的トラブルを抱えている方々への対応をより充実させ,国民,県民の皆様の混乱や不安を少しでも解消できるように当会は一丸となって努めていく所存です。
2020年(令和2年)5月15日
金沢弁護士会 会長 宮 西 香