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低賃金労働者の生活を支え地域経済を活性化させるために、最低賃金額の引上げと中小企業への支援強化を求める会長声明
低賃金労働者の生活を支え地域経済を活性化させるために、
最低賃金額の引上げと中小企業への支援強化を求める会長声明
第1 最低賃金額の引上げ
新型コロナウイルスの長期に及ぶ感染まん延によって、働く者の収入が減少している。2021年10月に公益財団法人連合生活開発研究所が全国の賃金労働者に行った調査によれば、1年前と比較した現在の世帯全体の収入の増減について、「増えた」との回答が16.6パーセントであったのに対して、「減った」との回答は30.6パーセント(石川県を含む中部地方に限ると33.6パーセント)にのぼった。 また、ロシア連邦のウクライナ侵攻の影響などもあり、食料品、電気、ガソリン などの生活関連品の価格が急上昇している。労働者の生活を守り、新型コロナウイルス感染症に向き合いながら経済を活性化させるためにも、最低賃金額の引上げが必要である。
また、諸外国においては、フランスでは2021年10月に10.25ユーロから10.48ユーロに引き上げられたほか、ドイツでも2022年1月に9.82ユーロから10.45ユーロに引き上げられ、さらなる引上げに向けた審議がなされている。イギリスでも、2022年4月に8.91ポンドから9.5ポンドに引き上げられたほか、韓国でも2021年1月に8720ウォンから9160ウォンに引き上げられた。このように、多くの国においてコロナ禍で経済が停滞する状況下においても最低賃金の引上げが実現しているのであり、我が国においても本年度の最低賃金額の引上げは必要である。
なお、2022年6月7日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる「骨太の方針」)においても、最低賃金をできる限り早期に全国平均1000円以上に引き上げることが盛り込まれた。
第2 中小企業への支援強化
新型コロナウイルス感染拡大による影響は、地域経済の担い手である中小企業にも及んでいることは明らかであるところ、最低賃金を引き上げることによって,中小企業の経営状況や雇用情勢に与える影響は小さくなく、また、電気やガソリン等の価格上昇は労働者のみならず中小企業にとっても深刻な問題であることから、 最低賃金額の引上げを抑制すべきという指摘も考えられるところである。
この点に関しては、政府や地方自治体 が現在各種支援を行っているところであるが、さらに長期的継続的に中小企業支援策を強化することで対応すべきである。具体的には、社会保険料の減免や減税、補助金支給等の中小企業支援策によって、最低賃金の引上げによる影響を中小企業のみが負担することのないよう各種施策を進めるべきである。
労働者・使用者のいずれもが新型コロナウイルス感染症やロシア連邦のウクライナ侵攻の影響等に向き合いながら経済を活性化させるためには、最低賃金の引上げとの言わば車の両輪として、中小企業の支援を強化する施策の実施こそが求められているのである。
第3 結論
コロナ禍で地域経済が停滞している状況ではあるが、最低賃金の引上げには地域経済を活性化させる効果もある。当会は、全国及び石川県において最低賃金額の引上げを図り、地域経済の健全な発展を促すために、本年度、中央最低賃金審議会が最低賃金の引上げを答申し、さらに石川県の最低賃金審議会において最低賃金の引上げを決定することとともに、政府及び地方自治体による中小企業に対する各種支援策の強化を求めるものである。
2022年(令和4年)6月24日
金沢弁護士会
会長 二木 克明