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低賃金労働者の生活を支え地域経済を活性化させるために、最低賃金額の引上げと中小企業への支援強化を求める会長声明
・低賃金労働者の生活を支え地域経済を活性化させるために、最低賃金額の引上げと中小企業への支援強化を求める会長声明(PDF書類)
低賃金労働者の生活を支え地域経済を活性化させるために、
最低賃金額の引上げと中小企業への支援強化を求める会長声明
第1 最低賃金額の引上げ
新型コロナウイルスの長期に及ぶ感染状況の継続と、ロシア連邦のウクライナ侵攻の影響などにより、食料品や光熱費など生活関連品の価格が急上昇している。総務省が発表している2023年4月分の消費者物価総合指数は、2020年を100とすると105.1であり、前年同月比で3.5%も上昇している。労働者の生活を守り、経済を活性化させるためには、大企業だけでなく中小・零細企業も含めた全ての労働者の実質賃金の上昇又は維持を実現する必要があり、そのためにはまず最低賃金額の引上げが必要である。
また、フランス、ドイツ、イギリス、韓国などの諸外国においても、最低賃金額が引き上げられているのであり、日本においても引上げが必要である。
なお、2023年3月15日に開催された「政労使会議」において、岸田文雄内閣総理大臣も、2023年の最低賃金全国加重平均を、2022年の961円から、1000円への引上げを目標とした議論を求める旨を表明している。
第2 中小企業への支援強化
最低賃金を引き上げることによって,中小企業の経営状況や雇用情勢に与える影響は小さくなく、様々な価格上昇は労働者のみならず中小企業にとっても深刻な問題である。2023年3月28日に日本商工会議所が発表した、「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」によれば、調査に回答した中小企業6013社のうち最低賃金を「引上げるべき」と回答したのは42.4%と、「引下げるべき」「現状の金額を維持すべき」の合計33.7%を上回ったが、他方で55.1%の企業が人件費増加について「負担になっている」と回答している。
この点に関しては、政府や地方自治体が現在各種支援を行っているところであるが、さらに長期的継続的に実効性のある中小企業支援策を強化することで対応すべきである。具体的には、前記調査において多くの中小企業が支援策として求めている、各種景気対策、取引価格の適正化・円滑な価格転嫁、社会保険料の減免や減税といった中小企業支援策が進められるべきである。
労働者・使用者のいずれもが新型コロナウイルス感染状況の継続やロシア連邦のウクライナ侵攻の影響等に向き合いながら経済を活性化させるためには、最低賃金の引上げとの言わば車の両輪として、中小企業の支援を強化する施策の実施こそが求められているのである。
第3 結論
コロナ禍で地域経済が停滞している状況ではあるが、最低賃金の引上げには地域経済を活性化させる効果もある。当会は、全国及び石川県において最低賃金額の引上げを図り、地域経済の健全な発展を促すために、本年度、中央最低賃金審議会が最低賃金の引上げを答申し、さらに石川県の最低賃金審議会において最低賃金の引上げを決定することとともに、政府及び地方自治体による中小企業に対する各種支援策の強化を求めるものである。
2023年(令和5年)6月15日
金沢弁護士会
会長 織 田 明 彦