-
能登半島地震発災6か月を受けての会長談話
金沢弁護士会はいつまでも被災者に寄り添います
~能登半島地震発災6か月を受けての会長談話~
令和6年能登半島地震から半年を迎えての被災者復興支援に関する会長談話(PDF書類)
令和6年能登半島地震発災から半年が経過し、徐々に各インフラの復旧、被災者の仮設住宅への入居が進むとともに、各自治体において公費解体が実施されるなど復旧復興の兆しが一部見られるようになってきました。
しかし、未だに避難所から仮設住宅に移ることができない方や、公費解体が迅速に進まず安定した住居の確保が困難な方、収入の元となる生業の再建に目途が立たない方等、困難を抱える被災者が数多くおられ、地域の復旧復興は始まったばかりといった状況にあります。
過去5年と比較して、奥能登における3月、4月の死亡届の提出が3割増加したという事実に関しては、災害関連死による死者数増加の影響も危惧されます。
これから夏を迎え、気温が高まるにつれ、避難所や仮設住宅での生活による被災者の健康への影響が危惧されます。
さらなる災害関連死の発生はあってはならず、生活再建の遅れが被災者の生命に関わるという事実を重く受け止める必要があり、復旧復興には迅速性が強く求められます。
他方で、被災者の直面する問題やニーズは絶えず変化しており、被災者の「生の声」を置き去りにした各種制度の運用や申請期限の適用が画一的機械的になされることは望ましくありません。
当会としましては、発災直後から実施している無料電話相談等の支援を通じて、引き続き被災者の「生の声」に真摯に耳を傾け、関係各機関や団体と緊密に連携して課題の共有及び解決策の提言を行ってまいります。
また、当会では、以下の被災者支援を実施してきましたが、災害規模に照らすと利用件数が少ないといった印象を受けており、支援の存在自体を知られていないのではないかとの懸念があります。被災者に支援を届ける前提として、支援内容を被災者に漏れなく周知することが喫緊の課題です。今後、効果的な広報活動やより一層のきめ細やかな支援に取り組んでいく所存です。
① 無料電話相談の実施
被災者からすれば、抱える問題が弁護士に相談してよいものかどうか悩まれることが多いかと思われます。当会は、「何でも無料電話相談」といった名称のもと、日本弁護士連合会の協力を受け、土日を含めてあらゆる相談を受け入れる態勢を構築しております。
発災直後から当会だけで511件(本年6月24日現在、以下同じ)、日本弁護士連合会に対する相談件数が835件となっております。
② 現地説明会や各種法律相談会について
当会は、交通インフラの機能不全や被災者に占める高齢者が多いことに鑑み、段階に応じて、二次避難所や被災現地等への出張、日本司法支援センター(法テラス)の移動相談車両を利用するなどして、各種支援制度の説明会や法律相談会を無料で実施してきました。
今後とも、定期的に相談会等を実施し、より被災者に近い場所で情報や相談機会の提供を行ってまいります。
③ 能登震災ADR(裁判外紛争解決手続)について
令和6年能登半島地震に起因するあらゆる紛争、例えば隣地の建物やブロック塀が倒壊し、自宅に被害が出ているといったケースについて、当会の弁護士があっせん人として仲裁し和解による解決を目指します。
裁判所を通じた手続に比べて迅速に解決することが可能であり、これまでに20件の申立てがなされ、5件の和解が成立しています。
従来の災害ADRにおいては、申立手数料及び紛争当事者に対する弁護士のサポート費用を無料としていましたが、和解が成立した場合に成立手数料が発生していました。
今般、被災者がさらに利用しやすいよう、「能登震災ADR」と呼称し、成立手数料を無料化し、被災地に可能な限り近い会場を確保した上で、電話やWEB会議をも用いた形で手続を行えるようにしました。
公費解体が進まないケースの一つとして、建物の共有者の一人が解体に同意してくれないといった相談が当会にも寄せられていますが、そのような場面でもADRを利用することが考えられます。
④ 自然災害債務整理ガイドラインについて
被災当時、債務を負っていた被災者は、既存債務が減免されなければ再建の見通しを立てることが困難となります。
当会の弁護士は、登録支援専門家として金融機関等と協議交渉を行い、被災者の自立再建のきっかけとなるよう自然災害債務整理ガイドラインに基づく債務整理に取り組んでおり、これまでに116件の受付がなされています。
⑤ 被災事業者への支援
令和6年能登半島地震においては、多くの事業者も被災しています。被災により厳しい状況にある地域経済を活性化させるためには、個々の被災者のみならず被災事業者に対する支援が必要不可欠となります。
当会は、引き続きひまわりほっとダイヤルなどの被災事業者に対する法律相談を継続し、また、中小企業の事業再生等に関するガイドライン、自然災害債務整理ガイドラインなど各種支援制度の利用を促進するとともに、災害復興支援セミナーを開催するなど、さらなる被災事業者支援に取り組んでいく所存です。
当会では、復旧復興が実現されるその日まで、被災者一人ひとりに寄り添い、全ての被災者を取り残さない支援を継続していくことを強い決意をもって表明します。
2024(令和6)7月1日
金沢弁護士会
会長 髙 木 利 定