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罹災証明手続・公費解体手続等の申請期限について 被災者に寄り添った対応を求める会長談話
罹災証明手続・公費解体手続等の申請期限について 被災者に寄り添った対応を求める会長談話
罹災証明手続・公費解体手続等の申請期限について被災者に寄り添った対応を求める会長談話(PDF書類)
第1 被災者には考える時間が必要であること
令和6年能登半島地震の発災から半年が経過し、多くの被災者・被災事業者が少しずつ復旧復興に向けて具体的な制度利用を検討し、悩みながらも前へと動き始めておられるものと思います。
当会は、被災者を誰一人取り残さないという想いのもと、制度説明会や法律相談等を通して各種被災者支援制度が適切に活用されるよう努め、被災者支援に取り組んで参りました。具体的活動を通して、被災者の方々には現在も生活再建のための情報提供や相談支援を必要とする方がおられ、まだまだ「これからの生活」をどうするかに悩み、苦しんでおられる方が多くおられることを痛感しています。
現在、罹災証明書や公費解体等の被災者支援制度に関して申請期限や受付期限(以下、「申請等期限」といいます。)を設けている自治体も見受けられ、なかには当該期限を超過していることを理由として申請等の受付が拒絶された事案もあると聞きます。
しかし、被災者支援制度により本来救済を受けるべき被災者が申請等期限を理由として救済されないことは決してあってはならないと考えます。また、申請等期限を設けることは、被災者を焦らせ、判断を誤らせるおそれもあります。
早期の復旧復興を目指す思いは皆同じと考えますが、拙速な対応に陥り被災者が取り残されるようなことがあっては本末転倒です。
そこで、以下述べるとおり、各地方公共団体におかれては、罹災証明手続や公費解体手続等の被災者支援制度に関して申請等期限を設けないなど被災者に寄り添った対応をご検討頂きたいと考えます。
第2 罹災証明手続について
1 県内各市町の罹災証明に関する申請等期限の状況
当会が県内各市町における罹災証明に関する申請等期限の有無・内容を確認したところ、①一次調査について㋐申請等期限を設けないもの、㋑令和6年12月末頃とするものがあり、②二次調査や再調査について㋐申請等期限を設けないもの、㋑罹災証明書の交付日から1か月以内とするもの、㋒罹災証明書の交付日から3か月以内とするものなどがありました。
2 災害対策基本法は罹災証明手続に関して期限を設けていないこと
罹災証明手続は災害対策基本法90条の2に基づき市町村長の行うべき事務としてなされる手続ですが、同条は罹災証明の一次調査、二次調査及び再調査に関する申請等期限をいずれも設けておりません。
3 罹災証明手続に申請等期限を設けることの弊害
罹災証明書は各種被災者支援制度を利用するにあたって基礎となる重要な証明書です。かかる証明書の交付を受けられない被災者は、各種被災者支援制度による支援を受けられず、極めて酷な状況に置かれます。とくに、各地方公共団体が独自に定めた申請等期限を超えたことのみで罹災証明書の交付が受けられなくなることは不適切であり、何よりも各地方公共団体が負う法令上の義務に違反するおそれがあるものと考えます。
また、二次調査・再調査に関しても、被災者が前の調査結果を建築士などの専門家に相談するなどして検討し、さらなる調査を求めるべきかどうかを考えるためには十分な時間が必要です。被災者がしっかりと検討できるようにするためにも、二次調査・再調査に申請等期限を設けるのは適切ではありません。
4 小括
以上より、少なくとも現時点において、罹災証明手続の一次調査、二次調査及び再調査について申請等期限を設けることは適切ではないと思料します。
第3 公費解体手続について
1 県内各市町の公費解体に関する申請等期限の状況
当会が県内各市町における公費解体の申請等期限について調べたところ、①申請等期限を設けていないもの、②令和6年9月末頃、③同年10月末頃、④同年12月末頃、⑤令和7年3月末頃、⑥令和7年8月末頃とするものなど、自治体ごとに大きな相違がありました。
2 公費解体の申請等期限を設けることが不適切であること
被災者は、震災により居住建物等に損壊を受け、心身ともに傷つき疲弊している中で、「これからの生活」をどのようにしたらよいか悩んでいます。思い入れのある建物を修繕して住み続けるのか、解体して建て直すのか、それとも慣れ親しんだ土地を離れ、新たな居住場所を探すのか。それ自体が大きな選択です。
その検討のためには、どのような支援制度の対象となるのか、どのような支援金や給付金等の金銭給付があるのか、どのように従前の債務を扱ったらよいのか、どのように資金を調達すればよいのかなど、複雑な支援制度等の情報を集め、整理して考える必要があります。
被災者自身がこのような難しい判断が求められる今後の居住場所を巡る問題をしっかりと考えて決断するためには、十分な時間が必要です。被災者に短期間にその決断を迫ることは困難を強いることになりかねません。
加えて、今回の被災地域には相続手続未了の不動産が多く、相続人調査や相続人からの同意取得等に時間を要する事例や、所有者不明建物等について管理人の選任を要する事例など、公費解体の申請を行うまでにかなり時間を要する事例が相当数予想されます。
このような点からも公費解体の申請等期限を設けるのは適切ではないと思料します。
第4 その他制度について
義援金の配分や応急修理などの制度にも同様の問題があります。申請等期限が設定されることで被災者が十分に救済されない事態を招くことは避けるべきことです。各地方公共団体におかれましては、申請等期限を設定することにつき慎重な検討を行って頂きたいと考えます。
第5 最後に
当会は、当会として被災者・被災事業者を誰一人取り残さないという想いのもと被災者支援に取り組んでいくことを改めて確認するとともに、県内の各地方公共団体に対し、罹災証明手続や公費解体手続等の被災者支援制度に関して申請等期限を設けることなく、十分に被災者・被災事業者の悩みに寄り添った制度運用をされるよう強く要望致します。
2024(令和6)年7月29日
金沢弁護士会
会 長 髙 木 利 定








