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低賃金労働者の生活を支え地域経済の活性化を実現するために、最低賃金額の引上げと中小企業への支援強化を求める会長声明
低賃金労働者の生活を支え地域経済の活性化を実現するために、
最低賃金額の引上げと中小企業への支援強化を求める会長声明
低賃金労働者の生活を支え地域経済の活性化を実現するために、最低賃金額の引上げと中小企業への支援強化を求める会長声明(PDF書類)
第1 最低賃金額の引上げ
ロシア連邦のウクライナ侵攻の長期化やエネルギー価格の高騰などの影響により、米などの食料品や光熱費、生活関連品の価格が、依然として上昇している。総務省が発表している消費者物価指数のうち、総合指数は、2020年を100とすると、2024年3月分は107.2、2025年3月分は111.1と3.9ポイント上昇している。
また、厚生労働省が発表している毎月勤労統計調査によれば、実質賃金指数のうち、消費者物価指数(総合)で実質化したものは、2020年平均を100とすると、2024年3月は88.7、2025年3月は87.2と1.5ポイント減少している。労働者の生活を守り、経済を活性化させるためには、大企業だけでなく中小・零細企業も含めた全ての労働者の実質賃金の上昇又は維持を実現する必要があり、そのためにはまず最低賃金額の引上げが必要である。
なお、2025年6月13日に閣議決定された、「経済財政運営と改革の基本方針2025」においても、「2020年代に全国平均1500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続することとし、官民で、最大限の取組を5年間で集中的に実施する。」との方針が示されている。
第2 中小企業への支援強化
最低賃金を引き上げることによって,中小企業の経営状況や雇用情勢に与える影響は小さくなく、様々な価格上昇は労働者のみならず中小企業にとっても深刻な問題である。特に、石川県内おいては、令和6年能登半島地震及び令和6年奥能登豪雨により多くの中小企業も被災していることから、事業再建にあたって最低賃金の引上げが負担となることは避けられないと考えられる。
この点に関しては、政府が「経済財政運営と改革の基本方針2025」において、「適切な価格転嫁と生産性向上支援により、影響を受ける中小企業・小規模事業者の賃上げを後押し」するとして、「各都道府県の地方最低賃金審議会において中央最低賃金審議会の目安を超える最低賃金の引上げが行われた場合は、持続的な形で売上拡大や生産性向上を図るための特別な対応として、政府の補助金による重点的な支援を行うことや、交付金等を活用した都道府県の様々な取組を十分に後押しすることにより、生産性向上に取り組み、最低賃金の引き上げに対応する中小企業・小規模事業者を大胆に後押しする」との方針を示しているところ、この方針を具体化した、従前の支援制度の拡充や新たな支援制度の創設(税・社会保険料の減免、助成金の支給、取引価格の適正化や業務効率化支援等)による負担の軽減が必要である。
労働者・使用者のいずれもが物価上昇や被災により厳しい状況にある地域経済を活性化させるためには、最低賃金の引上げとの言わば車の両輪として、中小企業の支援を強化する施策の実施こそが求められているのである。
第3 結論
最低賃金の引上げには地域経済を活性化させる効果もあり、被災した地域の経済が活性化することは復興にもつながるといえる。当会は、全国及び石川県において最低賃金額の引上げを図り、地域経済の健全な発展と災害からの復興を促すために、本年度、中央最低賃金審議会が最低賃金の引上げを答申し、さらに石川県の最低賃金審議会において最低賃金の引上げを決定することとともに、政府及び地方自治体による中小企業に対する各種支援策の強化を求めるものである。
2025年(令和7年)7月1日
金沢弁護士会
会長 山 村 三 信