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生活保護基準引下げを違法とした名古屋高等裁判所金沢支部判決を高く評価し、同判決の確定、生活保護利用者及び元利用者への補償及び生活保障法制定を強く求める会長声明
生活保護基準引下げを違法とした名古屋高等裁判所金沢支部判決を高く評価し、同判決の確定、生活保護利用者及び元利用者への補償及び生活保障法制定を強く求める会長声明
生活保護基準引下げを違法とした名古屋高等裁判所金沢支部判決を高く評価し、同判決の確定、生活保護利用者及び元利用者への補償及び生活保障法制定を強く求める会長声明(PDF書類)
1 2025(令和7)年9月17日、名古屋高等裁判所金沢支部は、石川県内の生活保護利用者4名(うち1名は控訴審係属中に死去)が、2013(平成25)年8月から3回に分けて実施された生活保護基準引下げ(以下、「本件引下げ」という。)に係る保護費減額処分の取消等を求めた訴訟において、原告らの請求を棄却した第一審判決を取り消し、同処分を違法であるとして取り消す判決を言い渡した。
2 本件引下げは、2011(平成23)年から生活保護基準の在り方を検討してきた社会保障審議会生活保護基準部会の報告書が取りまとめられた後に、厚生労働大臣独自の手法で算出され、同部会でもまったく議論がなされなかった、2008(平成20)年から2011(平成23)年に物価が下落したからという「デフレ調整」等を主な理由として行われたものである。
本判決は、厚生労働大臣による裁量権行使の適法性に係る司法審査について、判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の客観的な数値等の合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査されるべきとした上で、物価変動率のみを直接の指標として保護基準を改定した点につき、一般国民の消費実態との均衡を図る従来の水準均衡方式との連続性等の点において専門的知見との整合性を欠くので、厚生労働大臣の判断及び手続には過誤・欠落があり、生活保護法第3条、第8条第2項に違反し違法であるとした。
なお、大阪府内及び愛知県内の生活保護利用者が提訴した本訴訟と同種訴訟の上告審において、本年6月27日、最高裁判所第三小法廷は、本判決と同様の判断を示して、本件引下げが違法であり保護費減額処分を取り消すとの判決を言い渡している。そのため、仮に本判決について国が上告したとしても、最高裁判所が本判決の結論を支持し、国の上告を棄却することが見込まれる。
3 当会は、2012(平成24)年12月27日、「生活保護基準の引下げに強く反対する会長声明」を発表し、生存権の保障(憲法25条1項)、個人の尊厳の原理(憲法13条前段)に反するものであること等を理由に、本件引下げに反対してきた。
本判決は、原告らへの保護費減額処分が違法であるため取り消されるべきと判断したものであるから、当会はこれを高く評価する。
4 本件引下げが違法であったということは、国、厚生労働大臣、処分をした自治体、福祉事務所が、亡くなった生活保護利用者を含めて、本件引下げが行われた期間に生活保護を利用していた多数に上る生活保護利用者が、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害されていたということである。国は、この事態を深刻に受け止めて、提訴した者以外の利用者及び元利用者に対しても、本件引下げ前の基準によって受けるべきであった保護費と実際の支給額との差額を支給するなどの、必要な補償措置を直ちに講じるべきである。
また、本判決で示された趣旨を踏まえて、生活保護基準の改定が適法性を欠くことがないようにするための必要な立法措置が講じられるべきである。具体的には、2024(令和6)年10月に日本弁護士連合会が開催した第66回人権擁護大会における「『生活保障法』の制定等により、すべての人の生存権が保障され、誰もが安心して暮らせる社会の実現を求める決議」でも改めて確認されたように、生活扶助基準について、①国会が審議会の調査審議を求めた上で、意見を聴いて改定しなければならないこと、②改定は統計等の客観的関連性の有無について再検証を可能とする方法によらなければならないこと、③審議会が生活保護利用者の意見を反映させるために必要な措置を講じることなどを内容とする「生活保障法」(日弁連・2019(平成31)年2月14日「生活保護法改正要綱案(改訂版)」の制定が必要である。
5 よって、当会は、国に対し、本判決に対して上告することなく本判決の確定により訴訟を終了させ、本判決を踏まえた生活保護の利用者及び元利用者への補償措置を直ちに実施するとともに、上記「生活保障法」を制定することを強く求める。
2025(令和7)年9月17日
金沢弁護士会
会長 山 村 三 信








