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令和7年8月豪雨災害における賃貸型応急住宅(みなし仮設住宅)の供与期間の見直しを求める会長声明
令和7年8月豪雨災害における賃貸型応急住宅(みなし仮設住宅)の供与期間の見直しを求める会長声明
令和7年8月豪雨災害における賃貸型応急住宅(みなし仮設住宅)の供与期間の見直しを求める会長声明(PDF書類)
第1 声明の趣旨
1 石川県、熊本県及び熊本市は、令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害(以下、「令和7年8月豪雨災害」という。)の被災者に対する賃貸型応急住宅(みなし仮設住宅)の供与期間(入居期間)に関し、被災時の居住形態を理由として供与期間に差を設ける取扱いを早急に是正すべきである。
2 熊本市は、令和7年8月豪雨災害の被災者に対する応急仮設住宅(賃貸型応急住宅)の供与期間(入居期間)の延長に関し、初回契約期間が6か月以内である被災者のみを延長対象者とし、その他の被災者には、供与期間の延長可能性について発信しないという対応を早急に改めるべきである。
第2 声明の理由
1 石川県、熊本県及び熊本市は、被災者に対する賃貸型応急住宅(みなし仮設住宅)の供与期間(入居期間)に関し、被災時の居住形態を理由として供与期間に差を設ける取扱いを早急に是正すべきであること
⑴ 石川県、熊本県及び熊本市は、令和7年8月豪雨災害の被災者に対する賃貸型応急住宅の供与期間について、被災時に持ち家に居住していた被災者については入居日から2年以内、賃貸住宅・公営住宅に居住していた被災者については1年以内として、居住形態を理由に供与期間に差を設けている。
⑵ 住居の確保は、生命及び身体の安全の確保のためはもとより、個人の尊厳の確保や健康で文化的な最低限度の生活を営むために必須のものであり、基本的人権の保障にかかわる重要な問題である。そして、応急仮設住宅は、被災者にとって、被災前の暮らしを取り戻すために今後の恒久的な住まいを確保する上で、必要不可欠な生活再建の土台である。
被災後における恒久的な住まいを確保するためには、職場や学校との位置関係のほか、日常生活を送るために必要な施設が生活圏内にあるか否かを検討することが必要である。また、持病や障害を抱えた方々にとっては、災害発生前に受けていた医療・福祉サービスと同等のサービスが受けられることは、その生命及び身体の健康を維持するために不可欠である。特に高齢の被災者については、住み慣れた居住地のコミュニティの喪失がその心身に及ぼす影響は、生命の侵害にまで及ぶほど深刻である。
このような、被災者の本質的な生活再建を考慮しないまま、応急仮設住宅の供与を終了し、被災者に対し退去を求めることは、生命及び身体の安全は勿論のこと、個人の尊厳や幸福追求権(憲法13条)、居住移転の自由(憲法22条)といった基本的人権への大きな制約となるおそれがあるところ、被災時の居住形態のみをもって、供与期間に差を設けることに合理性はない。
災害救助法においても、居住形態をもって供与期間に差を設ける規定は存在せず、「災害救助事務取扱要領」では、災害救助法の基本原則の第一原則として、「平等の原則」(現に救助を要する被災者に対しては、事情の如何を問わず、また経済的な要件を問わずに、等しく救助の手を差し伸べなければならない。)を掲げており、被災時の居住形態を理由として供与期間に差を設けることは、この「平等の原則」に照らしても相当でない。
⑶ 以上のとおり、石川県、熊本県及び熊本市が被災時の居住形態を理由として賃貸型応急住宅の供与期間に差を設けていることは、災害救助法の趣旨に反するものであり、「災害救助事務取扱要領」の「平等の原則」に照らしても相当でない。その上、憲法が保障する基本的人権を正当な理由なく制約するおそれがあり、「法の下の平等」(憲法14条1項)に反するおそれすらある。
なお、「災害救助事務取扱要領」は令和7年7月に改訂され次の記載が追加された。
「被災自治体の判断により、被災前の住家が『借家』や『公営住宅』である被災者に対する応急仮設住宅の供与期間について、被災前の住家が『持家』である被災者のそれより短く設定することも可能である。ただし、その場合には、当該供与期間内に代替となる新たな借家を探すことが困難であるなどの場合には、被災自治体の判断により、供与期間を最長2年まで延長できることとする必要がある。」
供与期間に差を設ける運用は当該改訂部分を根拠としていると考えられる。しかし、当該改訂部分については前記と同様の平等原則に反するものであり不適当なのであって、内閣府においても令和7年10月に「災害救助事務取扱要領」に関して当該改訂部分の一切をまるごと削除する、さらなる改訂をした。この様な点からも供与期間に差を設ける運用には根拠が欠けている点が理解できる。
⑷ よって、石川県、熊本県及び熊本市は、令和7年8月豪雨災害の被災者に対する賃貸型応急住宅(みなし仮設住宅)の供与期間(入居期間)に関し、被災時の居住形態を理由として供与期間に差を設ける取扱いを早急に是正すべきである
2 熊本市は、被災者に対し期間の延長について案内すべきこと
⑴ 上述のとおり、被災時に賃貸住宅・公営住宅に居住していた被災者について、石川県及び熊本県は、賃貸型応急住宅の供与期間を1年以内と設定しているところ、被災当初、熊本市に至っては6か月以内と設定し、さらに、熊本市のホームページや熊本市賃貸型応急住宅の案内チラシ(令和7年(2025年)9月5日付令和7年8月豪雨災害によってお住まいに被害を受けられた皆さまへ(ご案内))において、期間の延長に関する記載は一切なかった。
その後令和7年11月に入り、同市は、被災時に賃貸住宅・公営住宅に居住していた被災者の供与期間について、6か月以内から1年以内へ延長する運用に変更したものの、供与期間が1年を超えた後の延長可能性について明確な案内をしていない。
⑵ 石川県や熊本県は、供与期間が1年を超えた後の延長可能性について、各々のホームページ上で発信しており、「災害救助事務取扱要領」にも延長の必要性についての記載がある一方、熊本市はこのような供与期間の延長可能性ないし必要性について、被災者に対して一切案内等発信を行っていない。
このような熊本市の被災者への対応は、被災者における生活再建を冷静に検討実施する機会を実質的に喪失させるものであり、被災者保護の観点から不適切であるため、直ちに改められなければならない。
⑶ よって、熊本市は、令和7年8月豪雨災害の被災者に対する応急仮設住宅(賃貸型応急住宅)の供与期間(入居期間)の延長に関し、初回契約期間が6か月以内である被災者のみを延長対象者とし、その他の被災者には、供与期間の延長可能性について明確な発信をしないという対応を早急に改めるべきである。
2025年(令和7年)11月27日
金沢弁護士会
会長 山 村 三 信








