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生活保護世帯が受給する義援金等の収入認定に関する会長声明
生活保護世帯が受給する義援金等の収入認定に関する会長声明
生活保護世帯が受給する義援金の収入認定に関する会長声明(PDF書類)
令和6年能登半島地震の被災者が受ける義援金等(義援金、災害弔慰金、被災者生活再建支援金、その他の見舞金)に関し、生活保護を受給する被災者の中には、義援金等を受領した結果、収入認定がなされることにより、生活保護費の減額や生活保護の廃止、停止がなされていることが報道機関によって報じられた。
そもそも義援金は、市民等の善意を原資として、被災者の生活基盤の回復等のために支給されるものであり、受給によって最後のセーフティネットといえる生活保護費が減額ないし停止され、ひいては生活保護を受給している被災者の生活再建が困難となっては、義援金や生活保護制度の趣旨に反することは明らかである。
この点に関し、厚生労働省は、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生事務次官通知)において、「災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金、保険金又は見舞金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額」については収入として認定しないことを定めている。
また、「東日本大震災による被災者の生活保護の取り扱いについて(その3)」(平成23年5月2日厚生労働省社会・援護局保護課長通知)でも、義援金等の生活保護制度上の収入認定の取扱いは、上記実施要領に従い、「当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額」を収入として認定しないこととしており、これを受けて、「令和6年能登半島地震による被災者の生活保護の取扱いについて(その2)(令和6年1月11日厚生労働省社会・援護局保護課事務連絡)においても、義援金等の取り扱いにつき、上記「東日本大震災による被災者の生活保護の取り扱いについて(その3)」(平成23年5月2日厚生労働省社会・援護局保護課長通知)にも準じて取り扱うこととし、「管内実施機関に周知徹底いただくとともに、被災者の事情を考慮し、適切な保護の実施に当たるよう、特段のご配慮をお願いいたします。」と要請している。
しかし、このような事務連絡が発出されているにもかかわらず、義援金等を受給したことにより生活保護が停止または廃止となったとする報道がなされているということは、いまだ義援金等の取扱いについて周知徹底がなされていないことが懸念される。
この点が生活保護利用者や関係者に周知されなければ、生活保護を受給する被災者が義援金等の受領を躊躇することとなりかねないため、かかる通知の内容を十分に周知することが必要である。
また、各福祉事務所は、義援金等を収入認定するか否かを判断するに際し、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省社会局長通知)に基づき、被災者である生活保護受給者から自立更生計画書を徴収しているものと思われる。
令和6年能登半島地震においても上記「東日本大震災による被災者の生活保護の取り扱いについて(その3)」(平成23年5月2日厚生労働省社会・援護局保護課長通知)に準じて取り扱うこととしていることは前述のとおりであるところ、同通知には、「複数次に渡って配分される義捐金等については、自立更生計画を段階的に策定するなど、当該義捐金等が、被災した被保護世帯の生活再建に有効に活用されるよう配慮すること」、「当該被保護世帯の自立更生のために充てられる費用であれば、直ちに自立更生のための用途に供されるものでなくても、・・・自立更生計画に計上して差し支えない」と記載され、義援金等については広く「当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額」として取り扱うよう求めている。
また、収入認定除外を求める自立更生計画書には、被災によって再購入を要する家財道具等のみならず、生業費(免許・資格取得費用等)、教育費(子供の学用品、塾、部活動費等)、介護費等を計上することが認められており、こうした費用を積み上げれば、受領した義援金等の額を上回ることも十分ありうることである。
しかし、このような通知の存在、そして計上できる費用があることを被災者が認知していることはほとんどないと思われるところ、本来収入として認定されないはずの義援金等までが収入として認定され、生活保護が廃止又は停止となってしまうおそれがある。
仮にこのような結果が生じれば、被災者の生活再建が困難となることは明らかである。
同通知でも「自立更生計画の策定に当たっては、被災者の被災状況や意向を十分に配慮し、一律・機械的な取り扱いとならないよう留意する」ことが要請されているのであるから、そもそも自立更生計画を提出することによって、義援金等が収入として認定されず、生活再建のために活用することができるようになる可能性があること、そして、どのようなものが「当該被保護世帯の自立更生のために充てられる額」となるのかについて、担当する職員は、被災者、とりわけ高齢者や障害のある人に対しては特に十分かつ丁寧な説明を行い、被災者の理解を得たうえで、被災者に自立更生計画を作成させる必要がある。
報道によれば、既に60世帯もの被災者が生活保護の受給停止となったとのことである。
この中にも「当該被保護世帯の自立再生のために充てられる額」として認定すべき義援金等を収入として認定している例があり、実際に法律相談や不服申立て手続きが行われているという情報もある。
よって、既に廃止や停止、保護費の返還等を決定した世帯についても、上記次官通知および保護課長通知の趣旨に沿わない決定がなされていることが明らかになったときは、同趣旨に沿う決定に改められなければならない。
そこで、当会は、令和6年能登半島地震及び令和6年奥能登豪雨災害について、国に対し、次官通知、保護課長通知の内容を改めて周知徹底するよう求めるとともに、関係各自治体に対し、被災者が安心して義援金等を受給できるよう、被災者に対してもこれを十分に周知し、被災者が十分に制度を理解したうえで、自立更生計画が作成できるよう支援すること、そして、既に廃止や停止、保護費の返還を決定した世帯についても、上記次官通知及び保護課長通知の趣旨に沿わない決定であった場合には、同趣旨に沿う決定に改めることを求める。
令和8年3月2日
金沢弁護士会
会長 山 村 三 信








